マーモットとは?叫ぶ真相やプレーリードッグとの違い・飼育の実態を解説
愛らしい丸っこいフォルムと、直立して周囲を見渡すユーモラスな仕草で世界中から愛されている「マーモット」。SNSのショート動画では、人間のような絶叫をあげる姿が爆発的に拡散され、日本国内でも知名度が一気に跳ね上がりました。しかし、その知名度の一方で、「プレーリードッグやモルモットと何が違うのか」「ペットとして飼育できるのか」といった疑問や、野生下での過酷な生き様についてはあまり知られていません。
実はマーモットは、過酷な高山地帯に適応したリス科最大級の野生動物であり、その生態系における役割や人間社会との関わりには驚くべき事実が隠されています。本稿では、最新の動物行動学の知見や現場の観察記録、法規制の動向をもとに、ネット上で噂される「叫ぶ理由」の真相から飼育のリアル、さらには同名を冠するアウトドアブランドのルーツまで徹底的に解剖します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:マーモットはリス科最大級の齧歯類で、ネットの「人間の叫び声」動画はアフレコ加工だが、実際は仲間へ危険を知らせる鋭い高音の警戒音(ホイッスル)を発する。
- 要点2:プレーリードッグとは体格(マーモットの方が3倍以上巨大)や生息標高が異なり、モルモットとは科レベルで全く異なる別種の動物である。
- 要点3:感染症予防法による輸入制限や強烈な穴掘り本能・冬眠習性があるため、日本国内でのペット飼育は極めて非現実的であり動物園での観察が最適である。
【基本生態と生息地】マーモットとはどんな動物か?リス科最大級の魅力
マーモット(Marmot)は、哺乳綱齧歯目リス科マーモット属(Marmota)に分類される動物の総称です。樹上で軽快に飛び跳ねる一般的なリスのイメージとは大きく異なり、大地に深い巣穴を掘って暮らす「地中性リス」の代表格として知られています。
現在、世界には15種前後のマーモット属が存在しており、その代表格がヨーロッパの高山帯に暮らすアルプスマーモットや、北米に広く分布するウッドチャック(グラウンドホッグ)、ヒマラヤ山脈の高地に適応したヒマラヤマーモット、そしてアジア北部に生息するシベリアマーモット(タルバガン)です。
過酷な山岳地帯に暮らすマーモットの餌・食べ物は、主に高山植物のイネ科の草、ハーブ、木の根、種子など完全な草食が中心です。季節によっては昆虫や幼虫を口にすることもありますが、基本的には繊維質の多い植物を主食としています。
特筆すべきは、厳しい冬を乗り切るための驚異的な冬眠期間です。多くのマーモットは、秋口までに大量の草を食べて皮下脂肪を限界まで蓄え、10月頃から翌年4月〜5月頃までの約半年から最長8〜9ヶ月間にわたって地下の巣穴で完全冬眠に入ります。冬眠中の心拍数は毎分100回以上から数回へと激減し、体温も外気温近く(数度程度)まで低下させてエネルギー消費を極限まで抑えます。
厳しい自然界におけるマーモットの寿命は野生下でおよそ10年〜15年とされ、外敵のいない安全な飼育環境下であれば15年〜18年以上生きる個体も報告されています。

ネットで話題の「叫ぶ姿」の真相|ミーム動画と実際の鳴き声の違い
SNSや動画プラットフォームで数千万回再生を記録した「直立して人間のおじさんのような叫び声をあげるマーモット」の映像を見たことがある方も多いはずです。しかし、動物行動学の観点および映像の検証から、あの音声の多くは人間が後からコミカルな叫び声を当てたパロディ(ネットミーム)であることが明らかになっています。
では、実際のマーモットは鳴かないのかというと、決してそうではありません。野生のマーモットが直立して口を大きく開け、全力で発する鳴き声・叫ぶ理由は、群れの仲間に天敵の接近を知らせる「警戒音(アラームコール)」です。
その実際の声は、人間の絶叫とは異なり、鳥のさえずりや人の口笛に似た「ピィーッ!」「キィーッ!」という非常に高周波で鋭いホイッスル音です。山岳地帯の開けた斜面では、イヌワシなどの猛禽類やキツネ、オオカミといった外敵がいち早く視界に入ります。見張り役のマーモットは自らの危険を顧みず高音のシグナルを発し、仲間に「空からの敵(ワシ)」か「地上からの敵(キツネ)」かを鳴き声のトーンや回数で区別して伝達し、一斉に地下の巣穴へ逃げ込ませます。
ネット上で面白おかしく消費される姿の裏側には、過酷な高山生態系を仲間同士の連携で生き抜くための、研ぎ澄まされた生存戦略が存在しているのです。
【徹底比較】マーモット・プレーリードッグ・モルモットの決定的な違い
外見や名前の響きが似ていることから、一般に混同されやすい「マーモット」「プレーリードッグ」「モルモット」。生物学的な分類からサイズ、生息環境、生態に至るまで決定的な違いが存在します。以下の詳細比較データを確認してみましょう。
| 項目 | マーモット(アルプス等) | プレーリードッグ | モルモット |
|---|---|---|---|
| 生物学的分類 | 齧歯目 リス科 マーモット属 | 齧歯目 リス科 プレーリードッグ属 | 齧歯目 テンジクネズミ科 |
| 成体の体長・体重 | 体長45〜60cm / 体重3〜8kg (猫〜小型犬並みの巨体) | 体長30〜40cm / 体重0.7〜1.5kg (マーモットの約3分の1) | 体長20〜30cm / 体重0.8〜1.2kg (手のひらより少し大きい程度) |
| 主な生息地・原産 | ヨーロッパ・北米・アジアの高山帯 | 北米の中部平原(大草原地帯) | 南米(アンデス地方の家畜起源) |
| 冬眠習性 | 完全な長期冬眠を行う(半年以上) | 種による(浅い休眠または非冬眠) | 冬眠しない(完全室内適応) |
| 日本国内での飼育 | 極めて困難(輸入規制・法制限) | 輸入禁止だが国内繁殖個体は飼育可 | 一般的なペットとして容易に飼育可 |
特に「モルモット」との名称の混同は、歴史的な誤訳に起因しています。16世紀にオランダ人が日本にテンジクネズミを持ち込んだ際、マーモット(Marmot)と誤認して伝えたことが語源とされており、生物学的には全く別の科に属する別動物です。

【実態検証】マーモットはペットとして飼育できる?法規制と性格のリアル
ネット上の愛らしい仕草を見て「マーモットを自宅でペットとして飼いたい」と考える愛好家も存在しますが、日本国内におけるマーモットペット飼育の現実には極めて高いハードルが立ちはだかっています。
第一の壁は、法的な輸入規制です。2003年の感染症予防法改正により、ペストや狂犬病、サル痘などの人獣共通感染症の侵入を防ぐため、マーモット属を含む野生齧歯類の海外からの輸入が原則として厳格に禁止されました。現在日本国内に流通している正規の生体はほぼ皆無であり、稀に国内繁殖個体がオークションや専門店で話題になる場合でも、生体価格は数十万〜100万円以上と極めて高額かつ入手ルートが限定されています。
第二の壁は、その生態と性格が懐くかどうかという飼育環境上の問題です。現地飼育員やエキゾチックアニマル専門医の見解によると、マーモットの飼育には以下のような現実的な過酷さがあります。
マーモットは本来、地中深くに数百メートル規模のトンネルを掘る強烈な穴掘り本能を持っています。その強靭な爪と鋭い切歯は、一般的な木製ケージはおろか、室内の壁、柱、電気コード、家具を容易に破壊します。また、幼体から人工保育された個体であれば飼い主を認識して甘えることもありますが、成体になると縄張り意識や警戒心が強く現れ、発情期には気性が荒くなって鋭い歯で噛み付く事故も珍しくありません。
さらに、日本の高温多湿な夏は高山帯出身のマーモットにとって致命的であり、24時間の徹底した温度管理(エアコンによる室温15〜20度前後の維持)と、半年近くに及ぶ冬眠期の適切な健康管理が不可欠となります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
エキゾチックアニマルとしての受容や動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点から、マーモットの飼育を検討する際の明確な基準を整理します。
【飼育を避けるべき人】
「SNSで可愛いから」「室内で手軽に齧歯類を愛玩したい」と考えている一般的な飼育希望者は絶対に避けるべきです。モルモットやデグーのような一般的な小動物感覚で迎え入れると、破壊行動や温度管理の難しさ、専門獣医師の不在によって飼育崩壊を招くリスクが極めて高くなります。
【唯一検討が許される条件】
動物園レベルの頑丈な専用屋外・半屋内施設を建設可能で、高額な設備投資と光熱費を惜しまず、野生動物の行動特性に精通した専門獣医とのコネクションを持つ専門施設・研究者レベルの環境を整えられる場合に限られます。
【国内観察ガイド】日本で本物のマーモットが見られる動物園と現地事情
「本物のマーモットを生で観察したい」という場合、マーモット日本動物園見られる場所を探すことになりますが、実のところ現在日本国内でマーモットを常設展示している動物園は極めて少数です。
かつては東京都の恩賜上野動物園などでアルプスマーモットやボバックマーモットが飼育展示されていた歴史がありますが、前述の輸入制限や個体の高齢化に伴い、国内の飼育頭数は減少の一途をたどっています。現在、一般的な日本の動物園で「直立して周囲を見張るリス科動物」として展示されているものの大多数は、北米原産のオグロプレーリードッグやリチャードソンジリスです。
もし野生のアルプスマーモットが活発に動き回る姿をありのままに見たいのであれば、スイスやオーストリア、フランスなどのアルプス山脈における夏のトレッキングが最も確実です。現地のツェルマット周辺などでは「マーモット街道(Marmot Trail)」と呼ばれる観察ルートが整備されており、初夏から秋にかけて岩場からひょっこり顔を出す野生個体を間近で観察することができます。

なぜブランド名に?アウトドアブランド「Marmot(マーモット)」の評判とルーツ
ファッションやアウトドアの世界で「マーモット」という名前に馴染みがある方も多いでしょう。1974年にアメリカ・コロラド州で創業したトップクラスのアウトドアブランド「Marmot(マーモット)」は、まさにこの動物が名前の由来となっています。
創業者のエリック・レイノルズとデイヴ・ハントリーは、アラスカの過酷な氷河地帯での研究中、極寒の高山でも力強く生き抜くマーモットの姿と、仲間同士で寄り添い助け合うコミュニティ形成に深い感銘を受け、「マーモット・クラブ」という登山サークルを立ち上げたことがブランド創設のルーツです。
アウトドアブランドとしてのマーモットの評判は非常に高く、アウトドア業界で初めて透湿防水素材GORE-TEX(ゴアテックス)をウェアに採用したパイオニアとして知られています。過酷な雪山登山に耐えうる最高峰のダウンジャケットやハードシェルから、日本のストリートシーンにも馴染む洗練されたマウンテンパーカーまで、機能性とデザイン性を両立させたギアとして現在もプロの登山家から一般ユーザーまで絶大な支持を集めています。
【マーモットとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マーモットとグラウンドホッグ(ウッドチャック)は同じ動物ですか?
A1:グラウンドホッグ(別名ウッドチャック)は、マーモット属(Marmota)に属する「Marmota monax」という種であり、マーモットの仲間(一種)です。北米では毎年2月2日に「グラウンドホッグデー」という冬眠明けの行動で春の訪れを占う伝統行事が有名です。
Q2:マーモットの肉は食用にされることがありますか?
A2:モンゴルや中央アジアの一部地域では、伝統的にシベリアマーモット(タルバガン)などが狩猟され、脂肪分を多く含む肉が郷土料理(ボードグなど)として食されてきた歴史があります。ただし、ペスト菌を媒介するノミを宿している危険があるため、現地でも無許可の狩猟や生肉の解体は固く規制されています。
Q3:マーモットが直立して「お祈り」のようなポーズをするのはなぜ?
A3:マーモットが2本足で立ち上がるのは、高山帯の見通しの良い場所から周囲360度の天敵(猛禽類や肉食獣)をいち早く察知するための見張り行動です。前足を胸元に畳むポーズがお祈りをしているように見え、世界中で愛されるチャームポイントとなっています。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
マーモットは、ネット上のユーモラスなミーム動画で知られる一方、本質的には過酷な高山生態系を生き抜くリス科屈指のタフな野生動物です。鋭い警戒ホイッスルによる高度な仲間同士のコミュニケーション、半年以上にも及ぶ徹底した冬眠システムなど、その生態は知れば知るほど生命の神秘に満ちています。
日本国内において「ペットとして飼育する」という選択は、法的な輸入規制、破壊的な穴掘り習性、そして高山に適応した体温管理の難しさから極めて非現実的であり推奨されません。愛らしい姿を楽しむためには、信頼できる動物園の特別展示や現地のネイチャーツアー、あるいは生態ドキュメンタリーを通じて、本来の野生の魅力を正しく理解することが最善の関わり方といえます。 (出典: マーモット と は(Yahoo!ニュース))